for reference
参考までに、2つの事実。
中核の社員が一人辞めると、会社は何を失うのか
手をかけて育てた社員が一人辞めたときの損失は、
“ 約1,244万円 ”
管理職1名と、その後に続いて辞めた部下1名の場合(当社試算)管理職本人の年収の、約2.1倍にあたります。
■「給料が浮く」は、半分だけ正しい
「辞めれば、その分の給料は浮く」。
そう考えるのは自然なことですが、半分は見落としがあります。
給料の支払いが止まるのと同時に、その人が生んでいた利益も止まります。
人を雇うのは、その人が人件費より多くの利益を生むからです。
辞めた瞬間に消えるのは「人件費」ではなく、「人件費を差し引いたあとの利益」のほうです。
では、実際にいくら失うのか。計算の前提から、先にお見せします。
それが、経営の判断として欠かせなくなっています。
■計算の前提・サービス業、従業員50名規模の会社
・課長・店長クラスの管理職。中途で採用し、5年かけて育てた方
・年収600万円
年収600万円は、統計上の平均ではなく、計算のための例です。
損害額は、その方の年収のおよそ2倍になります。
年収500万円なら約1,000万円、700万円なら約1,400万円。比率は変わりません。
御社の管理職の年収に、2を掛けてみてください。
■管理職本人が辞めた分:約779万円(年収の約1.3倍)・採用のやり直し:226万円
人材紹介の手数料、求人広告、社長と総務の選考の時間
・退職と入社の手続き:13万円
・席が空いている3か月の利益の減少:246万円
・後任が独り立ちするまでの6か月の損失:294万円
後任の生産性の不足と、教える側の時間
■なぜ「もう1名」を計算に入れるのか退職は、1人で終わらないことが多いからです。
パーソル総合研究所が、正社員3万7,244人に事前調査を行い、欠員が出た職場を調べました(2024年11月27日発表)。
・欠員が出ても、77.0%の職場では補充されていない
・退職者の約5人に1人は、引き継ぎをせずに辞めている
・欠員が出たチームでは、後任と上司の残業が長く、燃え尽きの傾向が高い
・後任者自身の退職意向が高くなっている
・欠員の後に起きた困りごとで最も多い回答は、「他にも退職する人がいそうだ」(40.0%)
補充されない。残った人に仕事が乗る。疲れる。次の人が辞めたくなる。
この流れは、1つの調査の中でつながって確認されています。
米国の研究でも、同僚が転職活動を始めると、周りの人が辞める確率は約1.5倍に上がることが示されています。この影響は、人数が少なく、互いの距離が近い職場ほど強く出ていました(Felps et al., 2009)。中小企業にこそ当てはまる話です。
連鎖が必ず起きる、とは言いません。
ただ、起きやすい構造があることは、データが示しています。
そこで当社の試算では、慕っていた上司に続いて辞めやすい「直属の部下1名(年収450万円)」だけを計算に入れました。2人目、3人目は入れていません。
■連鎖して辞めた部下1名の分:約465万円(年収の約1.0倍)・採用のやり直し:151万円
・退職と入社の手続き:13万円
・欠員3か月の利益の減少:185万円
・独り立ちまで3か月の損失:116万円
■目に見える費用は、全体の約3割請求書が届く費用(採用と手続き)は、約403万円。全体の約3割です。
残りの約7割、約841万円は、空席の期間の利益と、後任が育つまでの損失です。
損益計算書のどこにも項目として出てきませんが、確実に失われています。
■数字を大きく見せないために、控えめにした点・人材紹介の手数料:管理職の実勢は年収の35〜40%のところ、下限の30%で計算
・欠員の期間:採用から着任まで3〜6か月かかるところ、3か月で計算
・会社の利益:小さく見積もる側の設定(労働分配率70%)で計算
・連鎖退職:1名のみ
・5年分の育成の費用:計算に入れていない
■この金額に、入れていないもの金額にはしていませんが、次のことも起きています。
・抜けるのは「人手」ではなく「判断」です品質を保つ判断、トラブルを事前に止める勘所、どこまでやれば十分かの線引き。経験のある管理職が担っていたのは作業ではなく、会社の仕組みの一部です。
・最後に穴を埋めるのは、社長です
社長が現場に入っている間、新しい取引先も、次の一手も止まります。失われるのは時給ではなく、会社が成長する速さです。
・労使のトラブル全国の労働相談は年間121万件を超え、4年続けて120万件を上回っています(厚生労働省、令和5年度)。一度紛争になれば、解決金と弁護士費用、そして社長の対応の時間がかかります。
・口コミ求職者は応募の前に、会社の口コミを読みます。応募が減れば採用が長引き、残った社員の負担が増えます。
・部下の引き抜き辞めた管理職が、転職先で前の部下を誘うことは珍しくありません。退職後の勧誘は、原則として法的に止められません。
・教えた側の気持ち「また一から教えるのか」。育成を担った社員のこの気持ちは、帳簿には出ません。
■時代の流れそして、この損失は、これから大きくなりやすい環境にあります。
働き手は、これから確実に減っていきます。
労働政策研究・研修機構の推計では、日本の労働力人口は、2022年の6,902万人から、2040年には6,002万人まで減る見通しです(経済が伸びず、働く人の割合も今のままの場合)。経済が伸び、女性や高齢の方の就労が進む場合でも、6,791万人と、今より少なくなります。
一方で、転職は当たり前になりました。
総務省の労働力調査では、1年間に転職した人は、2013年の287万人から、2024年には331万人に増えています。今の仕事を変えたいと考えている人も、2024年には1,000万人にのぼります。
人を採るのは難しくなり、辞めるための壁は低くなっています。
外から採り続けることで穴を埋める経営は、これから成り立ちにくくなります。
■経営者の言葉
松下幸之助は『実践経営哲学』(1978年)に、こう書いています。
「"事業は人なり"といわれるが、これはまったくそのとおりである。(中略)経営の組織とか手法とかももちろん大切であるが、それを生かすのはやはり人である。どんなに完備した組織をつくり、新しい手法を導入してみても、それを生かす人を得なければ、成果もあがらず、したがって企業の使命も果たしていくことができない。」
この考えは、今の世界の経営者も変わりません。
ヴァージン・グループ創業者のリチャード・ブランソンは、こう書いています。
(辞めてもよそで通用するほどに、人を育てる。そして、辞めたいと思わないほどに、人を大切にする。)
マイクロソフトのCEO、サティア・ナデラは、著書『Hit Refresh』にこう書いています。
(CEOは、組織の文化を育て、守る役目を担っています。耳を傾け、学び、一人ひとりの情熱と才能を会社の使命に生かす。そういう文化があれば、会社にできないことはありません。そうした文化をつくることが、CEOとしての私のいちばんの仕事です。)
今いる人が育ち、辞めない会社をつくること。
それは、きれいごとではなく、会社が続くための条件になっています。
■離職を1人減らすために、年間いくらまでなら投じるべきか。これまで、人への投資は「余裕があればやるもの」として扱われがちでした。
採用すれば人が来て、辞めても次が見つかる。そういう時代には、それでも会社は回りました。
けれど、働き手が減り、転職が当たり前になった今、
辞めたときに失う金額と、辞めないために投じる金額を、同じ物差しで比べること。
設備や広告と同じように、人への投資も数字で判断すること。
それが、経営の判断として欠かせなくなっています。※注記
当社の試算です。年収600万円の管理職1名(サービス業・従業員50名規模)と、直属の部下1名(年収450万円)が辞めた場合を例にしています。業種・規模・人員構成により変わります。
※出典:パーソル総合研究所「オフボーディングに関する定量調査」(2024年11月27日)/Felps, W. et al. (2009) Academy of Management Journal, 52(3)/厚生労働省「令和5年度 個別労働紛争解決制度の施行状況」/マイナビ「中途採用状況調査2026年版」/M. D. Watkins『The First 90 Days』/労働政策研究・研修機構『2023年度版 労働力需給の推計』(資料シリーズNo.284、2024年)/総務省統計局「労働力調査(詳細集計)2024年平均」/松下幸之助『実践経営哲学』(PHP研究所、1978年)/Richard Branson「How to lead the next generation」Virgin公式サイト(2017年10月11日)/Satya Nadella『Hit Refresh』(2017年)、Fast Company掲載の抄録(2017年9月21日)/英文の和訳は当社訳。人事サービスは高い
同じ内容を、組織分析・研修・顧問・システムと、別々の会社で揃えると、
“月額 110万円~210万円”
※当社調べ。各社の公表価格・一般的な相場に基づく試算です。
標準プランの内容は、貴社の課題に応じた個別設計となります。








